アウトドア講座:キャンプで食事をつくる

2.3. 非常事態も考えて ~食糧計画~

 キャンプでの食事は、思わぬことで変更を余儀なくされることもあります。たとえば、食事の時間に雨に降られたり、プログラムがおして、時間がなくなったり…。自然のなかでの行動は、かならずしもこちらの思い通りにすすむものではありません。

 

 また、子どもたちの技術水準や道具によっても、最初の見通しを大幅にはずれることがままあるものです。「このメニューにはこの材料」といった、余裕のない食糧計画だけでは、いざという時に困ってしまいます。

 

★ あっ!雨だ。どうしよう…

 屋外でのカマドに頼る食事づくりで、雨にザンザン降られたら悲惨です。カマドのうえに屋根を作るなどして濡れないようにする工夫も必要ですが、焚き木が湿ってきたら、ほとんどお手上げです。

 

 山の夕立は、ともすると、たいへんな雨を降らせます。ぼくも何回かそうした夕立に会いました。谷の両脇の山に区切られた空がみるみる暗くなったかと思うと、バケツをひっくりかえした以上の雨が一気に降ってくるのです。

 

 屋外に作ったカマドの火は、最初の一撃で火が消えてしまいました。屋根のついているカマドでも、吹き込む雨と、あっという間に地面を川のようになって流れる雨水とで、すぐさまくすぶりはじめます。山をゆらすような雷鳴、薄暗くなったキャンプ場をストロボのように一瞬浮き上がらせるような稲光り。

 

 こうなるともう食事づくりどころでは、ありません。バンガローやテントのなかに非難して、雨の去るのを待つことになります。

 

 こうした夕立は、二時間もすればあがるのが普通ですが、夕食どきの二時間を棒に振って、雨があがってから夕食作りというのでは、疲労が増すばかりです。

 

 ハム、チーズ、ビスケットやクラッカー、缶詰類などがこういうときは、役に立ちます。こういうときのためにも生肉よりも加工してあるハムやベーコンのほうが役に立つのです。これに4~5人で一台の携帯用コンロがあれば、少しぐらい雨に閉じ込められても十分に栄養とボリュームのある楽しい食事をすることができます。

 

 どうせ、閉じ込められて身動きできない二時間です。カップヌードルなどですませようと考えずに、あるものを利用して、ディナーを楽しみましょう。たとえば…

★ テントでディナー

 ごはんをたくのは、たいへんなので、主食は、ジャガイモ。飯ごうに手頃なのを4~5個突っ込んで水を入れ、コンロにかけて20分ぐらいゆでます。ジャガイモは、おもしろい性質をしていて、小さく刻んでも、丸のままでもゆで上るまでの時間は、それほど変わりません。

 

 ゆでている間に、シーチキンの缶詰とコーンの缶詰、それにスライスした玉ねぎでサラダを作っておきます。ニンジンとキュウリはスティック状にして、塩もみ。ゆで上った、ジャガイモは、頭のところを四つ割にして、細かく刻んだチーズを詰め込みます。

 

 ハムは、スライスして、フライパンでいため、カレーのルーを刻んだもので味付けをします。葉野菜があればいっしょにいためたり、レタスのようなもので、いためたハムを巻いてもいいでしょう。ゆでジャガには、マヨネーズでもケチャップでも好きなものをつけて食べます。

 

 食事の間に再度お湯を沸かしておき、しあげは、紅茶にしましょう。食べ足りない人には、ビスケットかクラッカーをつけてあげます。

 

 いかがですか、水筒に適度の水さえ確保してあれば、テントのなかでもこんなすてきなメニューが考えられるのです。

 

 食べ終ったあとの食器は、雨がザンザカ降っているところに出しておきましょう。雨がやむころには、すっかり洗い流されていて、サッとゆすげばおしまいになります。

 

★ 「特別」でない「特別」

 非常の場合の食糧計画といっても、特別なものは、なにもありません。キャンプそのものが、都会での日常生活とは、違った「非日常」生活なのですから、不便なことを前提においた食糧計画を立てておけば、基本的には、間に合うのです。

 

 いくつかの基本点をくりかえすとすれば、

 

  • 特別な調理が必要な材料は、持ち込まない
  • ジャガイモ、ニンジン、キュウリ、ナス、キャベツといったような誰にでも親しみがあって、応用範囲の広い材料を中心に置く
  • なまものは、できるだけ避け、加工食品を使うか、事前に自分たちで加工して持っていく
  • インスタント食品は、意外と応用範囲が狭いのとかさばるので、よく考えて選ぶ

 

といった点でしょう。