4. これからの子育ち支援を支えるコンセプト

   ~ 「社会化」を促すために ~

 便宜上、子どもたちが主体的に育ちの模索を行うことを「子育ち」と呼び、それを支援することを「子育ち支援」と定義します。


 子どもたちの「社会化」を促すために、どのような「子育ち支援」を行ったらよいか?要するに、「社会化」に求められる要素や条件を意図的に整えていけばよいわけですが、そのために、今日、関係分野の研究たちの多くが特に注目していることが三つあるように思われます。


 一つは、「居場所」というコンセプトです。1990年代初頭に登場したこの概念は、その後少しずつ練り上げられて、現状は、「人間として、"安心と自信と自由"が保障される人間関係とそれが紡がれる場面なり機会」といった位に定義できそうです。


 「自由」とは、自分の可能性をいろいろ試してみることができる自由です。自信とは、可能性の検証によって得られた自分の力や適性を信じ、勇気を持って未知なる世界に羽ばたいていけることです。自己肯定感とでも言ったらよいでしょう。安心とは、万一新たなチャレンジに失敗しても、保護や慰撫に当たってくれたり、再起のための助言やきっかけを与えてくれるような支援者がいてくれるという意味です。大人だって、自分がやったことのないことをやるのは勇気がいります。人間はいざという時支えてくれる人がいてくれる安心感があるからこそチャレンジできるのです。


 さしずめ、仲本さんがいらして、日々様々な少年団や子ども会の若い皆さんが集い、様々な活動を推し進めていらっしゃる少年少女センターの事務所は「居場所」と思います。こういう「居場所」が全国のあちらこちらにほしいということです。現代は、「社会化」のルートを各々の子どもたちが自前で築く時代です。どういう人生を生きていくか?まずもって自分の適性や可能性をいろいろ自分で試す必要があるからです。人間関係を訓練するには人が集い、協同する場面に加わるしかありません。そして、そこで様々な人生や価値観とも出会えるわけです。

 

 

 二つ目は、「体験学習」です。キャンプなどの自然体験。様々な年代や立場の人たちとお祭りや、何らかの催しを作り上げる等の社会体験ほか、協同作業が多々含まれ、体と五感を使って体験する活動には、大きな発見や忘れがたい感動も多々伴います。協同、課題発見と解決のための試行錯誤、感性を磨く機会が乏しい現代の子どもたちであることや、「社会化」の本質を考えれば、その有効性は明らかです。「子育ち支援」に携わる人々は、どれだけ有意義な「体験学習」の機会を提供できるのでしょうか?ここに検討すべき重大な課題が一つ横たわっています。


 三つ目は、「社会参画」の促進です。「子どもの権利条約」が明らかにした子どもの権利群の中でも、実際の行使が最も難しいと言われているのが「社会参画」の権利です。「参画」とは、「一緒に計画作りに与ること」です。「仲間になる」意味の「参加」とは異なります。


 何の計画作りか?社会のあり方を構想する計画です。「市民」とは、「対等平等な政治参加の権利を有する人々」という意味ですが、子どもたちを「市民」と捉え、その意志を、社会のあり方の見直しや創造に反映できるか?ということです。東京の杉並区や町田市は、こうしたプロセスを踏まえて、子どものための新たな施設作りを実現しました。こうした体験を踏まえて、子どもたちは自信を身につけ、社会の一員であることやその責任を自覚するようになっていくところに重要な意味が隠されています。かつて多くの地域社会が「共同体」であった頃、村祭りや各種の行事に子どもたちの固有な役割があって、子どもたちが相応に村の一員として尊重されていた事実を思い返しておきたいと思います。