2. 地域に根ざした異年齢の活動だから

私たちの活動の中にあることばかり


 日常の活動の中にもたくさんありますが、わかりやすい例として少年少女キャンプ村で考えてみました。


 28回を迎えたこのキャンプは、東京中から500人以上集まる「大きなイベント = おまつり」です。特にキャンプの最終日の大キャンプファイヤーは、健康的にエネルギーを燃焼できるすてきな場となっています。


 このキャンプには、子どもたちが自分の住む地域ごとに「村」を作って参加します。その村に、少年団の子どもたちや、キャンプの楽しさを知っている、すでに仲間になっている集団の核があります。だから、齋藤孝先生の言う受け身の集団ではなく、「楽しいから行こう!」「友だちができるから行こう!」と誘われ、積極的な子ども集団になっており、さらにそこに献身的に子どもに関わってくれる指導員がいます。


 そんな仲間集団の中には、まず「あこがれ」があります。これは「まねる力」の基本です。キャンプには覚える技がたくさんあります。テントを建てる。かまどを作る。まきを拾い、火を燃やす。ご飯を炊く。花や、山の名前を覚えるなど、挙げればきりがありません。


 見よう見まねでやってみた1年目、教えられなくてもできるようになる2年目。雨や風など、どんな条件でもできる自信になり、他の子に教えられるようになって技になります。


 ギターのうまいお兄さんにあこがれる。そのお兄さんに教えてもらえることでより励みになる。上達を見守っている仲間や、自分をあこがれてくれる下の子がいる。


 そして、班長として、村長として、階級ではないけれど、やってみようと挑戦できる、がんばることができるポジションがたくさんあること。青年や、大人になっても成長にあわせ、班つき指導員、地域をまとめる生活指導責任者、さらに本部の仕事につきキャンプ全体を見るなど、集団を動かす、行事を作っていく「段取り力」が、推薦され、あるいは自発的に挑戦でき、支え励ましてくれる仲間がいることで、しっかり身につけていかれるのです。しかも、話し合いで進めるので「段取り力、コメント力」も、ポジションによって、規模も求められる質も違ってくるのです。


 さらに、これが継続されている行事で、地域に根ざした活動に支えられているので、キャンプの中でつけた力を、地域の活動の中で検証し本物にしていくことができます。


他では得がたい、この充実感!


 私はこの夏、少年少女キャンプ村に参加したスタッフに「参加の動機」「参加した感想」を聞きました。その中に、それを裏付ける話がたくさんありました。というより「キャンプでの体験で自分の変化、成長を感じられるから参加している」と言う方があっているようにも思いました。


 その中の一人。このキャンプは、大キャンプファイヤーの井桁を、中学生と指導員の若者が中心になって作ります。その責任者のマナブ君(23歳)は


「ファイヤーをみんなで作ることにあこがれて、薪組隊長になって6年目。中学生の時にテーマ別プログラムで「ファイヤー薪組隊」を選んでから、ずっと続けている。なぜかやりたい。なぜだろう。


 この暑いのに丸太かついで、自分で組み立てて、自分で燃して、片付ける。毎年暑くて、重くて、疲れて。みんなが楽しそうに遊んでいるのを見ながら「来年はゼッタイやってやらねえ」と思って、終るとなぜかやりたくなる。みんな同じ思いじゃないかな?一番の魅力は点火する時。二番目は消化の時。そして無事に終った後の充実感だ。」

 

と言いました。

 

 炎天下に3mもある丸太を担ぎ、そだを拾い、組み立てる。点火の工夫から、みんなが歌い踊るキャンプファイヤー中も、火を守リ、さらに翌朝後片付けまでする。大キャンプファイヤーの後、残り火を囲んで立ち尽くす、誇らしげな彼らの顔。心地よい疲れと充足感は彼等をまた一回り大きく育てるのです。「ありがとう」「ご苦労さん」みんなのこの声がそれを倍増します。


「よし、やるぞ!」新しいステージへの挑戦


 キャンプには3000m級の登山や、川遊び、野草で紙を作ったり、楽器を作ったり、さまざまな工夫をこらし大自然の中で楽しむ、10を超える「テーマ別プログラム」の日があります。その責任者に挑戦した、ケンイチ君(22歳)の場合は


「今年はユニオン村の生活指導責任者を3年やって一区切りついていた。1年目は何が何だかわからない。2年目はやっていることが見えて、3年目は余裕を持って関われるから生活指導は3年やって一人前と言われている。


 後輩に譲って今年は何をやろうか、思い切りがんばりたいと思う反面、何にもやる気がないとか、ぼんやり考えていたら、キャンプの本部が決まっていないと聞いて、テーマ別責任者を引き受けた。自分に勢いがあって「よし、やるぞ!」みたいに引き受けた。


 全部が初めてのことで、責任は感じているけれどどうしていいかわからなかった。お父さんとして関わってくれた遠山さんが、アドバイスをしてくれたり「気楽にやろうよ」と声をかけてくれたりするのが良かった。遠山さんもテーマ別の担当は初めてで、お互いにわからない者同士。来る前も「やり残していることがあるんじゃないか、不安だな」「大丈夫だよ」と言っていた。


 不安は今もいっぱい。生活指導と違うことが見えて勉強になる。他が見える分自分も見えて「自分は何をやっているんだろうと思う連続です。」


 テーマ別プログラムの前日に聞いたので、不安いっぱいの彼でしたが、無事終了。自信に満ち溢れた顔をしてキャンプファイヤーを楽しんでいました。足らなかったことは自分で気づいているはずです。就職のため来年のキャンプの参加は未定ですが、再度挑戦するか楽しみです。

 

より大きな目標をめざして


 テーマ別プログラムの一つに、標高3,033mの南アルプス仙丈ケ岳登山があります。このコースの責任者コウジ君22歳の話です。彼はケンイチ君の後輩になります。


「キャンプに来る前に自分の目標を立てた。ユニオン村の力を大きくするためにも、子どもを42人以上集めたいと思っていた。ところが、小学校で問題が起きて、部活が盛んになった。その勢いで夏休みも合宿ばっかり。学校でやるものは安いし、少年団より信用があるからキャンプに来る子どもが集められなかった。


 山に行きたいとすると2日目から村を留守にするから、みんなに迷惑をかけたくないと思って、スタッフに立候補した。ユニオン村にはケンちゃん(ケンイチ君のこと、彼は登山のコースの責任者を長くしていた)がいる。


 体を動かすことが大好きで山にあこがれていたので「よっし!仙丈に行くぞ!」と、おととし挑戦した。その年の責任者はコウスケで、山登りのうんちくから始まった。でも楽しかった。


 「山なんて楽しく登ればいいんだ!」は去年のリーダーキャンプ責任者のカツ君だった。むちゃくちゃおもしろかった。だから本番でケンちゃんを栗沢山のコースに行かせて、仙丈のテーマ別責任者の座を奪ってしまった。


 山は他のテーマではあじわえないものがある。それは人数が少ない分感じられる一体感。黒百合の花にもあえ、富士山も見えた。「山は体力よりも技術だ」というコウスケのうんちく登り、「山は登るだけ」のカッちゃん登り、ぼくは「山は楽しく登ればいい」と思った。


 去年キャンプが終って「よし!来年も仙丈岳に登るぞ!」と決めた。「山の帝王」がケンイチならば、「山のペテン師」コウジでいく。」


 彼は自分の力の未熟さを、ケンちゃんは帝王で、自分はペテン師だと表現している。来年も絶対山に行くと言う彼の目標は、帝王の力をつけることなのだと思う。


感じた話し合いの難しさと大切さ


 違う角度の話をしてくれたのは、小学校低学年の子が集まる、学童村の生活指導責任者の一人タロウ君(23歳)


「今年は仕事の休みが取れそうだったので、村の指導員で行くか、スタッフで行くか、村の責任者で、いとこのタクロウと話をしていた。学童村で青年の指導員が足らないと聞いて助けたいと思った。初体験だけれど何とかしようと思い「どういう村にするか」考えるところから関わった。


 やってみて、思っていた以上にたいへんだった。村の生活指導は仕事をしながらやってきたけれど、相手がタクロウだったから、家が隣、小さい時からいっしょに育っているから話さなくても考えていることがわかることが多かった。


 でも今年は違っていた。地域も生活もバラバラ。仕事が終ってから終電まで毎日のように会って話してきたけれど、会社の仕事上始める時間は遅いし、時間がないので話の途中で終る。キャンプの2、3日前には「もう会議は嫌」になっていた。


 でも本番になって、きちんと話し合われていない分が見えて来ている。慰労は子どもの笑顔かな。子どもが大好きだからそれだけで報われる。」


息子の頑張りを応援しながら、自分も楽しむ


 キャンプで育つのは青年だけではない、お父さんの池川さんは、次のように言っていました。


「今年の杉並の村は、息子が活動しているどろんこ少年団の子が参加者の大半なので、サポートしたかった。第2の理由は、自治委員(キャンプ村は選挙で選ばれた、5人の子どもの代表が運営します)のユウイチのおやじだからです。


 指導員から「自治委員をやらないか」と話があった時「そんなの寒いよー」と言っていた息子が決意してがんばっている。「やりきったぞー!」という気持ちを持たせたいので、全面的にサポートをしてやりたいのです。


 息子は毎日のように嬉々として会議に行っていました。それは義務感の会議ではないからでしょう。それを学んでくれている息子は幸せですね。大キャンプファイヤーの進行役をしている息子の姿には感動しました。


 私がこのキャンプが好きな理由は、夜な夜な、食事をしながらいろいろな人と話せる事。やっぱり親が楽しめるキャンプでないと、子どももつまらないのではないでしょうか、スタッフの仕事はたいへんだけどそれに勝るものがたくさんあります。身体はしんどいけれど、気持ちはリフレッシュ、充電です。


 今年学童村の生活指導の責任者をしているスミエちゃんの親から、ぼくたちが引き継いだものがたくさんあります。それを今度は僕たちが次の世代に引き継ぐ番です。これはやらなくてはいけないと思っています。


 大出先生に少年団の魅力は何かと聞いたことがあります。それは「あこがれ」だと言われました。小学生は中学生に、中学生は高校生に…。親は誰にあこがれるのか、それは他の親です。そんなすてきな親にたくさん出会えるのがこのキャンプです。」


 あこがれる人を求めるのは、子どもたちだけではないのです。しかも自分を親として育ててくれたのは、活動をともにしている地域の先輩の親で、自分の子どもたちを大人として育ててくれるのも、次の世代の人たちだと、だからその人たちを自分が育てるのだと、池川さんは言います。これが地域で子育てをする、そのために豊かな地域を作ることを願う、私たちの子育ての考えなのだと思います。