アウトドア講座:キャンプで食事をつくる

道具の文化

 食事づくりに欠かせない鍋や包丁、なじみの深い飯ごうなどの道具、一つ一つにも歴史があります。

 

★ 鍋の歴史

 日本で最初に鍋が作られたのは、いまから1万年ほど前の縄文時代でした。粘土を紐状に伸ばし、渦を描くように積み上げて、器の形を作り、それに縄目や、ひかっかき模様などをつけて、焼いたものでした。

 

 けれど、この容器は素焼きで、焼く温度も低く、強度も弱く、組成に隙間が多いので、水を入れるとしみ出てくるようなもので、蒸し焼きのような料理はともかく、まだ煮炊きするのには、不十分な代物でした。

 

 紀元前3世紀ぐらいにはじまる弥生式時代に入って、土器の技術も進歩し、稲作農業の普及とも相まって、煮炊きに使用されるようになっていきました。

 

 いま、だれもがあたりまえのように使っている金属の鍋が庶民の生活に行き渡るには、おそらく、はるかな年数を必要としたのでしょう。

 

 西暦700年ごろの万葉歌人、山上憶良の「貧窮問答歌」に、『火まどには、火気ふきたてず、こしきには、くものすかきて、飯かしぐことも忘れて……』という一説がありますが、ここにでてくる『こしき』は、いまで言う「せいろ」とおなじ様にものを蒸す道具で、そのころは、まだ、土器で作られていたもだと思われます。

 

 まあ、なにもここまで歴史をひもとく必要もないと思いますが、ものの起源を探る中で、思わぬ人間の英知を発見したりする楽しみもあります。

★ 人間の知恵に迫る

 いずれにせよ人間の歴史の中では、ずいぶん長い間、いまのように便利な金属器を利用した調理とはちがう調理が行われていたにちがいありません。

 

 こうした文化的背景をキャンプの中で再現し、人間の知恵に迫ってみるのは、どうでしょうか。

 

 もし鍋を使わないとすれば、どうしたらいいのでしょうか。鍋を使わない料理の例をあげてみましょう。

 

★ 鍋を使わない料理

豚肉のフキ(ホウ)葉焼き

 豚肉の味噌漬・たまねぎ・しいたけ・きのこ類・わらび、ぜん まいなどの山菜・シソの葉・ピーマン・ナスなどを、フキやホオの葉のうえにおき、砂糖、酒をふりかけ、味を整えます。 フキ(ホウ)の葉をたたみ、細いつるか、揚枝状にけづった枝でとめ、灰のなかで蒸し焼きにして食べます。

 

石やき料理
 焚火のなかに、直径30センチぐらいのできるだけ平たい石を3~4個投げ込み、火をがんがん燃やして、石を熱します。 火がおさまったら、石を取り出し、表面の灰をサッと洗い落し て、油をひき、肉や野菜を焼いて食べます。

パン焼き
 ホットケーキミックス(小麦粉・砂糖・ふくらしこ)を水か牛乳で耳たぶくらいの固さに練り、枝に巻きつけておき火にかざして焼きます。

串焼き(バーベキュー)

 これは、説明するまでもないでしょう。かたい枝や竹で串をつくり、肉や魚、野菜など、なんでもさしておき火のうえにかざして焼きます。

 

お湯を沸かす

 竹を利用したり、フキの葉で作った柄杓や紙で作った袋や箱でも、水さえ漏らないように作れば、弱火のうえにかざしてお湯を沸かすことができます。

 

竹めし

 お米は、よくといで、一晩水につけておきます。竹づつのなかに米と、同量の水、少量の酒を入れ、火にかざすようにして、炊きます。強い火で直接あぶると、竹からにじみ出てくる油に引火して、表面が燃え出してしまうので、弱火で時々竹づつを回転させたりゆすって、中の米に均等に熱が加わるようにしながら炊きあげます。

 なによりも、与えられた条件を楽しみながら生活する姿勢を大切にしましょう。