5. 自前の「社会化」の時代だからこそ

   ~ 子ども会・少年団に期待すること ~

今でも十分な意義や可能性


 このように考えてくると、子どもたちの「社会化」を促すための「子育ち支援」に、子ども会・少年団が大変大きな意義や可能性を秘めていることがよくわかります。


 一つは何と言っても、同年代=数歳位の幅で友だち付き合いの広がりがある集団(異年齢集団)であることです。「社会化」のプロセスに照らして考えれば、特に小学生の子どもたちにとって、現代的な意義が大きいと思われます。


 二つ目に、こうして育った子どもたちが指導員となり、後輩の子どもたちと付き合い続ける傾向が強いこと。民俗学にコミットする私は、つい若者組と子ども組の付き合いを連想してしまいがちですが、「居場所」が求められる時代、指導員の皆さんは、かつての自分の姿として子どもたちの心境に察するところ大であろうし、子どもたちからすれば、大人に比べれば比較的年齢が近く、感性を共有しやすい支援者がいてくれることは心強いことでしょう。指導員の皆さんは、「安心」という要素に寄与する所が大きいのだと思います。


 そもそも「体験学習」は、子ども会や少年団、児童館などが伝統的培ってきた方法です。私は立場上、「子育ち支援」に関係する様々な活動を目にしますが、とかく行政サイドや大人主導の「体験学習」が、子どもたちの生活拠点である地域を離れ、一過性の珍、稀、変なる体験のプロデュースに偏りがちなことを思う時、日常の活動とその後の成果のフォローにも目配りした「体験学習」のあり方や醍醐味を訴えることができるかけがえのない集団として、子ども会・少年団の存在意義が一段と大きくなってきているように思います。


さらなる発展を願って ― 欲張りな期待…?


 その上何を?という気もしますが、こんな課題も感じています。一つは、「社会参画」について申し上げましたが、社会を見る目や、人間関係の調整能力、企画構想する力、実行力など、特に指導員の皆さんには、子ども会・少年団で培かった力を活かして、積極的な「社会参画」を果たしていただきたいと期待です。

 

 それが子ども会・少年団の意義を世の中に知らしめ、子どもたちが「社会参画」する道も拡大することになると信じるからです。子ども会・少年団以外にも、ひたむきに子どもたちの育ちと向き合っている人々がいます。「社会参画」はそうした人たちとの出会いの機会ともなりましょう。、子ども会・少年団を相対化し、新しい発見も生まれてくると思います。


 二つ目は、活動のバリエーションをどんどん拡大することです。自前の「社会化」の時代には、子どもたちは、多様に自分の可能性を試す機会が必要だからです。どんな才能を掘り起こせるか?子どもたちの興味や関心をうまく拾い上げて、従来にない活動の企画を練っていくことにどん欲であってほしいと期待です。


 三つ目に、活動の拠点は当然に地域となりますが、是非、同時にそこから世界を見つめてほしいということです。環境問題しかり、私たちの生活は、今や世界の人々との密接な結びつきの中で成り立っています。問題の本質を掘り下げないと、真に有効な解決策を求めることができません。


 2000年6月に、『僕たちは、自由だ!』(本の泉社)という本が発行されました。(是非、ご覧ください。)たまたま昨年来日されたのですが、この本の著者であるクレイグ・キールバーガーくんは、来日当時17歳のカナダの高校生です。彼は12歳のある朝、新聞でパキスタン人の少年が殺されたこと、その子が幼い頃に奴隷のように働かされ、後に子どもたちの権利を訴えて世界を回っていたイクバル少年であることを知り、強い衝撃を受けるのです。そして、南アジアの現実を自分の目で確かめようとそこへの旅にでます。


 この本はその旅の記録なのですが、クレイグくんは、友達に呼びかけて、その後「フリー・ザ・チルドレン」というグループを結成。マスコミやインターネットを使って訴えるなど、南アジアの現状を変える運動、子どもの権利を確立する運動を始めるのです。本が出版されたこともあり、世界的に大きな反響を呼ぶことになりました。例えば、こんな活動に踏み出す子ども会や少年団はないでしょうか?いざ、チャレンジ!■