4. 子どもたちのあそびと仲間を育てるには?

「子どもたちは、ほっておけば遊び出すし、育つもの」と思っている人が多いのではないでしょうか。当の子どもたちにしても、「これ以上、あそびのことまで口出ししないで自由にやらせてよ!」と思っていることでしょう。

 けれどやっぱり今の子どもたちの遊びの状況や仲間との関係の中で、子どもたちが育ちそびれていくことをみすみす見逃しているわけにはいかないのです。

 いまの子どもたちも決して遊んでいないわけではありません。彼らなりに時間を見つけ、場所を見つけ、友だちを見つけて遊んでいます。

 公園に行けば、滑り台やジャングルジムのまわりで鬼ごっこやかくれんぼをしている子たちがいます。広場では、ちょっと大きい子たちがサッカーやバスケットボール、バトミントンなどで遊んでいます。駄菓子屋さんの前は、小・中学生のコミュニケーションの場になっています。

 誰の家でもテレビゲームができ、ビデオやコミックを見ながらのおしゃべりも楽しみのひとつです。

 だから、そういう子たちを見ていれば、「彼らもそれなりに遊んでいるな」と、安心してしまいがちにもなるのです。でも、それでは今の子どもたちを悩ませている問題が見えてきません。

 問題は、そうしたあそびの中で子どもたちの仲間関係が豊かに育つのではなく、互いに気を使いながらむしろ人間関係に疲れていってしまうということなのです。

 「友だちを呼んで誕生会をやったら食べるだけたべて、あとはみんなばらばらに漫画を読んだりテレビゲームをしたりするだけでいっしょに遊んだりしないのよ」と嘆くお母さんたち。

 「親がいくらおぜん立てして行事を企画してもかんじんの子どもはなんかしらけているのよね」とため息をつく子ども会の役員のお母さん。

 ほんとうはもっと遊びたい、友だちと楽しく過ごしたいと思っていても「これ以上気疲れするのはいや」とばかりに自分たちからは動き出せないでいるい子どもたちが自分たちであそびや仲間を育てられるようにするために四つのことをお願いしたいと思います。

1. ひとつは、子どもたちの話をじっくり聞いてくれ、時には相談にのり、いっしょに行動してくれるちょっと年上の若者を探すことです。

 漫画「キテレツくん」に出てくる万年浪人生の「べんぞうさん」は、子どもたちがなにか問題を持って相談に来ると、いつも「ほんとうは、いそがしいんですよ」と言いながらも、真剣に子どもたちが持ち込んだ問題に取り組んでくれます。

 「いつも自分の話をちゃんと聞いてくれた子ども会・少年団の指導員にあこがれた。」「子ども会・少年団の指導員とは、年齢に関係なく、思いきり遊んだり話せたりするのがいい」と多くの子が話してくれます。

 頼りがいのあるお兄さん・お姉さんたちは、子どもたちの生きる目標であり、今のいじめの問題に見られるように、親にも先生にも友だちにも相談できないような困ったことが起きた時の最高の援助者なのです。

2. 二つ目は、子どもたち自身にあらためて自分の中にある「ほんとうは、もっと遊びたい!仲間と深くつき合いたい!」という願いに気づかせることです。

 そのためには、なにかしらのインパクトが必要です。「キャンプ村や青空学校の中で、大きな声で歌を歌い、踊っている子を見て、自分もいつの間にか大きな声を出していた。」と自分の変化に驚いている子。同じ世代の子どもたちが、キラキラ輝きながら遊んだり、仲間となにかを作りあげている姿に触れるとか、思いきって自分もその中に飛び込んでみるという、それまでの自分を突き崩すようなきっかけをつかんでもらうことがだいじです。

3. もうひとつは、子どもたちが安心して、気軽にあそべる時間と場所をお父さん、お母さんの努力で作ってあげてほしいのです。

 今の子どもたちは、新しいあそびや少し大きな人数でのあそびに加わるのをとてもこわがります。やりかたがわからなくてばかにされるのがこわいと強く思っています。ましてや、上級生もいっしょに遊ぶなどというのは、とても勇気のいることなのです。

 子どもたちのそんな気持ちを理解して、やさしく仲間に誘ってくれるような集団を子どもたちは待ち望んでいます。「その日、その場所に行けば、必ず友だちがいるし、あそびがある。自分に声をかけてくれる大好きなお姉さん、お兄さんもいる。」そんな場が町の中に生まれたらどんなにかすてきでしょう。

4. 四つめは、子どもの組織づくりです。

 子どもたちが「友だちともっと楽しく遊びたい」という願いに気づき、子どもたちの相談にのってくれる若者が見つかり、一定のテンポで気軽に遊ぶ場を作ることができたら、そこに集まる子どもたちに働きかけて「子ども会・少年団」という子ども自身の「会」を作らせてほしいのです。

 どんなにたくさん子どもを集めて、いろいろなあそびをやったとしても、大人たちがすべておぜん立てしているのでは、子どもから見れば「遊ばされている」だけで、ほんとうの意味でのあそび集団にはなり得ません。あそびは、自主的、主体的に行われてこそ意味があります。大人が子どもを遊ばせている会は、やがて当の子どもたち自身から飽きられ、高学年にもなると来てくれなくなってしまいます。子どもたちが自分たちで決めて遊んだり、楽しい行事を計画して友だちを誘ったりできるようにするには、一定の「会」をつくることがどうしても必要です。また、「会」をつくることで、話し合いの方法や、男女の協力、中学生や高学年の子がリーダーとなって小さい子を育てていくといったこともできるようになります。

 お父さん、お母さんの努力で子どもたちが自分の力で子ども会・少年団を作っていけるように、条件を整えていくことは、ますますひとりぼっちになっていく子どもたちへの親としての最高のプレゼントです。■