8. おわりに すべての学童保育関係者のみなさんへ

 この文章は、大田区の学童保育連絡協議会の「学童卒室を考える」という学習会での講演をもとに書いたものです。

 

 学童保育の指導員として毎年、多くの卒会生を送り出し、そのたびに、親の不安や子どもたちの期待と不安と向き合ってきました。学童保育で活躍してきた子どもたちが地域の生活の中でどんどんバラバラになり、創造的な、生き生きとした活動が失われていくのを見るのは、とても辛いことでした。


 特に、何らかのハンディを持った子は、完全にひとりぼっちにされ、むしろ退行するようなようすさえ見られ、心痛む思いでした。学童保育の卒会が必ずしも子どもたちの新しい、豊かな成長の出発点にはならないことを痛切に感じてきました。


 高学年の子どもたちにどのような生活を送らせることが大事なのか、何回も親たちと話し合ってきました。その中で感じたことは、親の持っている「子ども像」が余りにも目先のものになっていることでした。


 やれ塾だ、習いごとだ、スポーツだとそれをやることで満足してしまい、子どもたちが忙しい生活を送る中で失われていくものを、頭の中ではそれなりに理解していても、自分の子どもに則して考えることがなかなかできないことでした。塾や習いごと、スポーツ活動に子どもたちが夢中になると、それで安心してしまって、そこでの指導のありかたや仲間関係がほんとうにお互いを大切にしようとしているものか、しっかりつかむことを放棄してしまう親の姿勢でした。

 

 厳しい言い方かもしれませんが、いま、子どもたちにとって重要なことは、問題行動を起こす子ではなく、むしろ、当たり前のいい子が管理的、暴力的指導に盲目的に従うことによって人間的な感覚を麻痺させられていることだと思います。


 できない子、遅れた子を嘲笑する。失敗を馬鹿にする。人の欠点をことさら取り上げて笑いのネタにする。など、最近の子どもたちに顕著な傾向は、単にテレビのバラエティー番組の影響だけではなく、子どもたちが夢中になって、取り組んでいる活動にたずさわる大人たちの指導や、姿勢の反映が大きいと思うのです。


 この文章では、高学年の子どもの発達の課題や、現実の子どもたちの生活を見ながら子どもたちの地域生活を「少年団」をつくる活動を通して豊かなものにしていく、という観点でまとめました。みなさんの話し合いの題材として使っていただければ幸いです。また、これを読まれたみなさんの感想や、ご意見を東京少年少女センターにお寄せください。■


学童保育指導員・東京少年少女センター会長 神代洋一