4. 実践記録を書く

何について書くか

 実践記録を書くには、まず、テーマを定める必要があります。例えばキャンプで実践記録を書くと決めたら、自分はうちの子ども会・少年団のキャンプで何を言いたいのかをはっきりさせておく必要があります。食事作りのことも書きたいし、ハイキングでがんばったことも書きたい、そうなるとどこにポイントをおいて話し合ったらいいのか分からなくなってしまいます。

 実践記録は、あくまでも実践討論をするために書くものです。学習のために使うのだから書くほうも、どこをたたいてほしいのか、どこを批判してほしいのか、それをはっきりとさせて書くことが必要です。実践記録は文章を書くことよりも、自分の実践、指導に関して、何が一番問題なのか、それがわからないと書きづらいものです。多分ここが問題なんだろうという程度であっても、その辺を自分の問題意識として、実践記録を書き始める必要があるのです。

書かなければいけないこと

  • 子ども会・少年団のプロフィールを書く

     一番目には、その舞台となる自分の子ども会・少年団のデータというものが必要です。人数が何人、男女比は、どんな場所で活動してるか、住宅地だとか、団地であるとか、実践には直接は関係ありませんが、子ども会・少年団も社会的なものだから、周りの状況によってその内容が違ってくることも少なくありません。板橋の子ども会・少年団と町田の子ども会・少年団、それから大田の子ども会・少年団、それぞれみんなカラーが違うはずです。そのカラーの違いは、そこの指導員の違いももちろんあるけれど、そのおいてある場所の環境の違いもあるはずです。子ども会・少年団の姿を、読んでいる人の頭の中にリアルに写しだすために、重要なものなのです。

  • ねらいをはっきりと

     それから2番目として、指導員のねらいをはっきり書きます。指導員というのは、やはり意図的に指導に関わらなくてはいけないと思います。ただ単純に子どもと一緒に遊ぶ、遊びたい、最初はそれでもいいけれど、これをやりたい、やらせたい、そういったものをもっている必要があると思います。

     例えば「団員をなかよくさせる」といった具体的なねらいをたてるわけです。「特に、男の子と女の子の仲が良くないから、それを何とかしよう」とかそういったことです。それは、子どもたちのつくる目標とか約束の中にも生きていくことになるはずです。指導員がその実践の中で何をねらっていたのか。これをきちんと書かないと、ただ行動の羅列になってしまいます。そのねらいにそって指導員は動くはずです。実践記録の方もそのねらいにそって書いていく必要があります。

  • 事実経過をリアルに

     そしてこれが一番大事なことですが、事実経過-子どもと指導員がどういった行動をとってきたか、実際に起こったことをきちんと書くことが大切です。失敗したからといって嘘を書いてはいけない。ごまかしてはいけません。

     心理描写というものもあります。特に指導員の心の動きを書いておくと、実感をともなった文章になっていくと思います。子どもの方は、その心は直接はわからないけど、表情に表れたものを書くといいと思います。そういった心理描写がないと読んでいておもしろくないし、共感できるものにはなりません。

     そして最後は結果です。その実践は結局どうだったのか、ねらいに対して成功だったのか、失敗だったのか、ということです。結果についての自分の思いをきちんと書いておくと、その実践に対する意見も出やすく、活発な討論会になっていくでしょう。

 

書き方について

  • 子どもの言動を写実的に

     実践記録を読んでいると、文章もよくまとまっているし、きちんと書いてあるのになぜかとっつきにくいものがあります。そういう実践記録は、たいがい会話が少なかったり、大部分が説明文のようなもので連なっていたりで、やっていることはわかるけれど、その様子が目に浮かんでくることはないし、子どもの気持ちになったり、指導員の気持ちになったりすることができない、そんな文章が多いようです。これではいい討論会はできそうもありません。

     こういった文章は指導員や子どもたちひとり一人の言葉や行動、様子、表情、心理描写までを描くことによって改善されるはずです。これらを書きこむことは、大変なことだけど、指導員をやっている人ならば、何となく顔を見て「おかしいな、どうしたんだろう」とか「おっ、今日はのってるな」そういったことを感じることができるはずです。それをそのまま文章の中に入れていくわけです。小説を書く人が「どれだけ自分が登場人物に感情移入できるか、それがその小説の出来、不出来を決める」と言っていました。実践記録にもそれが言えると思います。そこに登場する子どもたち、その子どもたちの気持ちになって書くことが必要です。

  • だれにでもわかるように

     実践記録は他の指導員に読んでもらうものです。だから自分の言いたいことがわかってもらえるかどうかが重要です。書き終わってから、どこをチェックするかというと、まず第一に読んでみて、この記録が子ども会・少年団を知らない人でもわかるかなということです。子ども会・少年団を知らない人でも、なんとなくその様子がわかるようであれば、当然同じ指導員の仲間であれば理解してもらえるはずです。さらに自分がこの実践記録で何を話し合ってほしいのか、そこを中心に書かれているのかも振りかえっておきましょう。

  • 柱立てをしっかりと

     繰り返し言うようですが、実践記録を書くという中で、一番重要なのがメモです。そのメモに肉付けをしていくわけですけれど、ただぶくぶくと肥らせていくだけではいけないわけです。書いていくうちに書きたいことが後から後から出てきてしまう。だから書くときには、章立て、柱立てが必要になってきます。これとこれとこれを順番に書くという具合に最初に考えて決めておくことが重要です。これを頭の中に入れておき、それにそって書いていくことが大切です。これは実践記録に限らず、一般の文章の書き方にもあてはまることです。思いつくことをどんどん書いていけば、後から後から書きたいことが出てくる、あるいは書くことがなくなってしまう、そういうことになると、尻つぼみになるとか、膨大な量になってしまったりして、文章として非常に読みにくくなったり、散漫なものになってしまうのです。

  • 実名か仮名か

     子どもたちの名前。これを実名で書くか、仮名で書くかということです。少なくとも書くときは実名で書かないと文章の内容が広がりにくいと思います。実際に名前を出すことによって思い出すこともいっぱいあるだろうし、思い入れも深まっていきます。書くときには実名でしっかり書いて、これを発表するとき、当然内容にもよりますが、これは実名で出してはかわいそうだな、そう指導員が思ったら、あとから仮名に直せばいいと思います。

     それから文体についても「ですます調」とか「であるだ調」に統一しておく必要があります。実践記録は読んでもらうものです。だからわかりやすく書く必要があります。まわりくどい言葉を使わないこと、ひとつの文章を短くすることです。