5. 実践討論について

 さて、今まで実践記録について書いてきましたが、実践討論は実践記録がなくてもできます。一人の人が自分の子ども会・少年団の実践を語って、その指導や子ども会・少年団、行事について討論をする。これでも実践討論には違いないわけです。

 じゃあなぜ、実践記録が必要なのか?実践記録があることによって、文章を目で追いながら考えられるから、考えも深められるし、また文章を書く側、実践を提供する方も書くことによって、その実践についての問題意識が深まり、その実践討論会がより有意義なものになるからなのです。

テーマの設定

 実践討論で大事なことは、何について話し合うのかというテーマを定めることです。具体的には「遊びの指導をどう行なうのか」とか、「会議の指導をどう行なうのか」というようなテーマを決めることです。

 テーマの設定には、いろいろな方法があります。ひとつは、多くの指導員が悩んでいるだろうというような問題を選んで、討論しあうのにちょうどいい実践をしている子ども会・少年団に実践記録を書いてもらうという方法。

 それとは逆に、「うちではこういう実践をやった、これについてみんなの意見が聞きたい」そんな要求があって、それに答える形で実践討論会を行なうという形もあります。

 どちらにしろ、一つのテーマを決めて、それに合う実践記録で実践討論を行なうわけです。このテーマの設定が重要で、一つの団会のなかにおいても、「子どもの会議の指導をどうする」「遊びの指導をどうする」というように、問題はいろいろあります。その中から討論したいテーマを選び出すのです。だからメモでいうと、一つのメモから観点を変えれば、いくつもの実践記録が、できることになるのです。

実践記録を読む

 実践記録を使った実践討論では、まず最初に声を出して読むことから始まります。黙読という方法もありますが、ここでは声に出して、音読するわけです。一人の人が読み、他の人はそれを聞きながら目で追っていく。ただ黙読をするだけでは見落とすことがあるから、誰かが読む声を聞き確認しながら黙読するわけです。

 それから読むだけではなく、書いた人の補足説明というものも必要です。討論のために作った記録でない場合は、なおさら必要です。

 その後に簡単な質問をとります。書いている本人には気づかない、抜け落ちている部分はどうしても出てくるものだからです。

討論ポイントの設定

 次にくるのが討論ポイントの設定です。一通り読んで、どの点について討論を始めようかという、そのポイントの設定をするわけです。テーマに深く関わりがある場面、問題だと思う場面を探して、ポイントにしていきます。そして、ポイントに沿って、ひとり一人の意見を出し合うわけです。もちろんかみ合わない場合もあるだろうけど、それで一つの共通の見解を出していくわけです。

討論をまとめる

 実践討論は、その記録に基づいていろいろ指導の仕方を学びあう、そういう気持ちで進めていかなければいけません。「うちではこうしてる」「こうしたほうがいい」という実例を出して話し合いを進め、みんなが理解しながら学びあえるようにします。話し合ったなかでみんなが一致できた点を確認しながら、討論会を終わっていきます。

 意見が分かれた場合でも、例えば指導方法で「こうやったほうがいい」「いやこうしなければだめだ」2つにわかれてしまったら、明らかに間違っているというふうにならないかぎりは、どっちかに決定しようという問題ではないはずです。

 こういう方法があって、これにはこういう利点があって、こちらにはこういう利点がある、そういう具合にそれぞれのいいところを並列に出しておいて、次の話し合いにもっていく方がいいと思います。結論を出さなくても、次につなげるためにはどこまで話したのか、どこまでみんなが理解したのか、それをまとめることは必要です。一回だけの討論会だと困るけど、月に一回なり二回なりの討論会であれば、最終的な結論を出さなくても、今回どこまで話したのかを出しておけば、次の時にそのつづきができる。少しづつでも討論を積み重ねていくことが必要です。

司会の役割

 実践討論会を進めるのに大切なのが、司会の人の役割です。司会の人はただみんなに発言してもらうだけじゃいけないのです。討論をうまい方向に―その討論会のテーマに沿った方向に進めていかなければいけません。発言はいろいろな方向に出されるだろうと思うけど、発言がテーマから離れては近づける、離れたらもとに戻す、そんな具合に交通整理をするわけです。

 一つの実践記録の中には、いろいろな参加者の興味をひくことがあるはずですが、それら全部について話し合っていたら、時間も足りなくなるだろうし、まとまりのない話し合いになってしまうでしょう。

 しかし、無理矢理に「だめだ」とすることは、その発言者の意欲をそぐことになるし、話し合いの幅を狭めることになってしまうので、そこで小さくまとめて「今回のテーマからは離れるので次回に」という具合にした方がいいでしょう。討論会を成功させるためには、司会の役割はとても大切です。事前に実践記録を読んでおくことはもちろん、討論の進め方も予想して考えておく必要があるわけです。最初からうまくできるわけはないのでしょうが、何回かやっているうちにわかってくるはずです。

実践記録の読み方

 実践記録は、実践討論会で読むだけではないはずです。例えば、家で一人で読むときもあるでしょう。そんなときも含めて、やはり自分のためにというか、自分の子ども会・少年団に生かせるようなことはないだろうか、というような観点で読むのがいいと思います。

 その記録に書かれていることをそのまま自分の子ども会・少年団でやろうとしても、おそらくはうまくいかないだろうと思います。状況や人数も違うことと思います。だから、何をその中から学ぶか、自分の子ども会・少年団で困っていることに、役に立つことはないだろうか、と探しながら読んだらどうでしょう。そのままでは使えないけど、こういうやり方もあるんだな、というのを見つければ、自分の頭の中で練り直すことです。自分の実践に役立つものが、見えるかもしれません。実践記録に関わらず、本とかニュースなどを読むときも、頭を子ども会・少年団の方に向けておいて、うちの子ども会・少年団で困っていること、これからやりたいこと、そういったものをいつも片隅においておいて、そして呼んでみる、そんなことが必要ではないかと思います。