では、どんな学びと活動=「実践」が期待されるのでしょうか?誠に僭越な私見ながら、以下のことを申し上げ、結びとします。
教育の世界では、従来、成人の状態に近づく体の変化を「成長」、いろいろな経験や学びを積み重ね、精神の機能が進歩・向上する変化を「発達」と呼んできました。しかも、例えば、1年生と6年生の間には4つの学年がありますが、1年生の成長・発達段階からいきなり6年生の段階に変化するわけではなく、正に1学年ずつ学年を重ねていくがごとく、徐々に段階を踏んで変わっていくものと考えられてきました。「成長・発達の節目」とは、固有の特色を伴ったこうした異なる段階の存在を意味しています。
そこで、いずれにしても、子どもたちの育ちの支援を合理的に進めていくためには、「成長」や「発達」に関する理解とそれを踏まえた取り組みを考えることが本来不可欠なはずです。育ちの中身に、自主的な学びや学び合いを組織したり、展開できたりするようになることが含まれているとすれば、取り分け精神の機能に基づく「発達」に関する知見は重要です。
学校教育には、学年という制度があり、子どもたちの「成長」「発達」段階をめぐる知見などを考慮した教育内容、指導方法の選定や見直しが絶えず繰り返されて来た歴史があります。
しかし、社会教育なり、地域における子育ち・子育ての世界では、こうした考慮や工夫は従来ほとんどみられませんでした。例えば、一口に「子どもの学校外教育」とか「地域子ども組織」といった表現に象徴されるように、「子ども」の捉え方は大変漠然としたもので、極論すれば、小学生も中学生も一緒にした議論が進められてきたと言えましょう。
数少ないこの分野の研究者たちも、折に触れて、子どもたちの育ちを阻むさまざまな問題を指摘し、その背景を論じることには熱心でしたが、実際に子どもたちとかかわる臨床現場で、各々固有な特徴を伴った「成長」「発達」段階に立つ個々の子どもに対し、もしくは集団としての子どもたちに向き合い、さらなる「発達」を促すような支援を図るにはどうしたらよいか?という基礎的な知見の整理や具体的な方法の構築は手づかずのままです。
細かな「発達」の節目に彩られた人生の一時期を過ごしている子どもたちであることを想起すると、より一層難しい問題であることが理解されるが、子どもたちの育ちを着実に促していくには、生活圏における学びや活動の展開においても、細かな「発達」の節目に考慮した取り組みが期待されます。
それをどのように構想し、実践していくか?「地域」にこだわる子育ち・子育て支援の時代にあって、子どもたちの保護者や職員、活動の指導者にとっても、研究者にとっても、もはや検討を回避することができない焦眉な課題と思われます。
「実践」は活動現場にいる人間にしかできず、そこから得られる経験もこの人たちしか手にすることができません。貴重な、そして、豊富な経験智を踏まえ、この点をどう精緻に理論化するか?地域子ども組織の関係者が果たすべき重大な課題がここにあります。■