「子どもは本来力があるということです。人間としてこれから育っていく真っ最中の子どもに力がないわけはないのです。植物を考えた時に、種から芽を出して双葉が育ち、これから本葉になろうとする時はものすごい成長の早さです。エネルギーがあります。
だから子どもは発達の真っ最中だと言うことを改めてみんなの認識にしないといけないですね。発達中だから、力はあるは、やる気はあるは、知りたがりで、やりたがりだ。意欲満々。これが生き物としての人間の子どもの大前提にあると思うのです。
子どもは発達するのが当たり前なのです。だから発達する方向をたどっていく方向で暮らしを考えないといけない。固定した大人の既成観念を当てはめていたら違うのです。だから、どんなふうに子どもの発達が進むのかを、私たちは知っていなければならないのです。」
と棚橋先生は、こんな状況の中で子どもの状態を嘆くだけでなく、発達の主体としての子どもの「力」を信頼し、人間らしい筋道にそって働きかけることのたいせつさを主張されています。
また、山崎先生は、「子ども自身が不安と危機の感情を強く持っていて、人間になるために苦しんでいる。自己の全体性を確立するために努力している」ことに共感し、「時には大人を乗り越えるような権利意識や差別への怒りの感覚を持っている」「発達の筋道を通る過程で苦しみながら、その一方で時代の感覚を鋭く駆け抜けようとしている子どもたちの力をあくまでも信頼し」、「(子どもたちの)外側は固いけど中はぐちゃぐちゃしている、その中に芯をどう育てるのか」を課題として子どもたちを見つめ、関わっていることを話してくれました。
この本に載せられているレポートや事例の中でどの人も、一人の学生として、親として、教師として、若い労働者として、周りの人を信じ、手をつなぎあって困難を一つ一つ乗り越えようとする「力」(山崎先生の言う芯)を子ども時代や青年時代に地域の異年齢集団(組織 =
子ども会や少年団)の中で育ったと言っているのは、偶然ではありません。既存の価値観にとらわれず、子どもたちの思いの中で自ら自主的に作り出していく、自由で民主的な子ども集団(組織)づくりの意義がそこにあります。