1. 子どもたちの成長発達と学童保育と卒会

 東京では、多くの区で学童保育は、三年生までとされています。学童保育を卒会して四年生になる。「四年生になる」「高学年になる」というのは、どういうことなのでしょうか。

 

自立への第一歩 ── 学童保育

 

 学童保育に預けている人は、ほとんどの人が保育園に子どもを預けてきています。朝、保育園でお母さんとわかれるのがいやで子どもが泣き騒いでいても、親はともかく保育園に置いて行かなければ働けないわけですから、後ろ髪を引かれる思いで、逃げるように出かけていきます。

 

 親につれていかれ、迎えにくるまでは、保育園の中から出れなかった幼児期とは違い、学童保育は、ともかくも自分の足で通って行くわけです。学校から学童保育へ、学童保育から自分の家へ、毎日毎日、自分の意思で歩いて行きます。これは子どもにとっては実に大変な事だと思います。

 

 「今日、うちで遊ばない?」と学校の友だちに帰りに誘われる。
 「新しいファミコンのソフトがはいったんだ」前の日、学童保育でいやなことがあった時にこんなことを言われると、つい気持ちが動いてします。ランドセルを家の前に投げ出して、そのまま友だちの家に行ってしまい、夕方、なにくわぬ顔をして帰るなんていう事をした子どもがどこの学童保育にもいると思います。

 

 保育園の時は、朝から夕方まで園の中で過ごしますから、友だち関係を見ても同じ保育園の友だち関係だけで他の世界をあまり知らない子が多い。とろが、一年生になると、学校は地域の中の子たちが集まるわけですから、自分と違う生活をしている子どもたちの姿もよく見えてくる。好きなときに、好き子と、好きな遊びをしているクラスの友たちを見て、「学童保育に通わなければならない自分」との差に子どもたちなりに悩むこともあるわけです。

 

 「学童保育を終ったら学校の友だちと自由に遊びたい」という要求もこうしたことから自然に出てくるものだと思います。

 

小学校低学年友だちとのかかわり方を覚える

 

 保育園の時の子ども同士のかかわりかたは、どうだったのでしょう。0才児や1才児がまだことばでは通じ合えないのに相手の動作を見て、例えば横にいる子どもがニコッと笑ったのを見て、何か反応しあっている。

 

 2才~3才位になると、友だちや保育者が積み木で遊んでいると、そのまねをして始める。相手も持っているおもちゃが欲しくて取り合いになる。そうやって自分の姿で、全身で自分の意思を伝え合いながら、相手を、友だちを意識していく。

 

 年中、年長くらいになると、「ごっこあそび」や鬼ごっこなどの遊びを通して中なの中での自分の役割や分担のしかた。一定のルールにそったかかわりかたを覚えて行きます。

 

 学童保育に通う小学校低学年の時期は、こうした幼児期の課題の完成の時期であると同時に次の時代を迎える準備をする時期でもあります。

 

 仲良く遊べる子どもの数も幼児期は、せいぜい2人から3人くらいです。保育園で20人から30人くらいの集団であって、その集団で遊んでいるように見えても、実は2人~3人ずつがいりいろいろな遊びをしていて、保育士さんがいると保育士さんを中心に10人くらいのわができるという状態です。

 

 これが小学校低学年になると5~6人くらいの人数で遊べるようになります。「伝え合い」の中でまわりの友だちが見えるようになってきた子どもたちが、となりにいる子どもたちに、どう誘いかけたらいいのか、友だちをもう少し広げるためには、どうしたらいいのかをゆっくり覚えていく時代です。

 

 「○○ちゃん、あそぼ!」となりから隣へと誘いあって、何人かが集まると「○○しよう!」と遊びが始まっていく。「○○するものよっといで!」というような誘いかけも生まれてくる。遊びが楽しくなってくると「また明日やろうね!」と遊びが継続し、他の友だちにも広がって、ブームが作られていく。

 

 いま、子どもたちの間にこうした豊かな仲間関係や、あそびの文化が自然に生まれづらくなってきています。だからこそ学童保育の3年間は、班活動や、さまざまな集団行動を通じて、こうした低学年にふさわしい生活を作り出していく場になる必要があるわけです。

 

学童保育卒会「9歳の節目」ギャングエイジ

 

 学童保育を卒会する4年生以降は、どういう時期でしょう。今まで大人の懐の中でジワリジワリと自立をしてきて、でも、精神的にはまだまだ大人に依存していて、大人のいうことから実際にはなかなかはずれきれない子どもたちが、そういう社会の枠組みみたいなものから跳び抜けて行こうとします。

 

 悪さをすると言うか、時には目に余るようなイタズラもしたりして、そうした形で大人と自分たちの距離を計ろうともします。集団の数もこのころになるとグッと多くなり10人、20人の集団を作り、遊びも「長馬」「泥警」「駆逐水雷」「陣とり」など活動的な遊びが増えてきます。

 

 そんな時代を、その特徴から「ギャングエイジ」といい、その仲間関係を「徒党集団」と呼んで「思春期」への橋渡しをする大事な成長の時期として教育学では位置付けてきました。いわゆる「九歳の節」というのは、社会や仲間の中で自分を見つめていく大事な「成長の節」だったのです。

 

 学童保育を卒会し4年生になるということは、子どもたちがこうした大事な「節」にぶつかるという大切な時期を迎えるということなのでは、ないでしょうか。