はじめに

 2000年度は、「17歳」というキーワードで、子どもの育ちの実態が注目を集めた年として、長く関係者に記憶されることでしょう。西鉄バスジャックなど、「17歳」の背景となった一連の事件22件を分析した警察庁の少年課によると、これらの事件の加害者25人中15人が、犯罪被害者であったり、いじめや家族からの暴力、教師からの過度の体罰を受けた経験者であるとのことです。特にいじめの被害体験との相関関係が疑われるようです。


 1999年度の警視庁のアンケート調査でも、非行で逮捕・補導された少年の81パーセントが、やはり体罰や被害体験者であったことが明らかにされています。


 公立の小・中・高等学校を対象とした1999年度の文部省全国調査によると、生徒1000人当たり、最もいじめの発生件数が多いのは栃木県で12.9件。全国平均では2.2件で、東京は平均以下の2.1件。やはり大都市を抱える大阪府は1.1件と報告されています。暴力行為、さらには不登校(1999年度、全国の小・中学生の内、13万人)にも同様なことが言えるようですが、大都市部より地方でこうした事態の発生が目立つようになってきているのが最近の特色とみられます。

 

 私が暮らす福島県の県警本部のまとめによると、1999年度、県内の警察署が検挙した者の内、実に半数を超える57パーセントが20歳未満の未成年者(大半は14歳以上20歳未満)であったとの報告です。「捕らえてみれば子どもだった…」とは、ある警察署長さんの言葉ですが、驚くべき現実ではないでしょうか?事件とまで呼ばれるような子どもたちの育ちのトラブルは、とかく都市部の問題のように捉えられがちですが、「普遍的=全国的に起こりうる問題=自分の身の回りでも起きる可能性がある問題」と疑いながらの検討が絶えず求められる時代を迎えているようです。


 2000年8月、文部省から発表された「平成11年度の生徒指導上の諸問題」によれば、2000年上半期に校内暴力で検挙された少年(14~19歳)478人についてみると、故意にけがを負わせるケースが増えているとの指摘です。しかも、理由や動機が不明確、行動の衝動性や突発性、単独行動などに特色がみられるとされています。


 それに続いて9月に発表された片岡直樹教授(川崎医科大学)の研究報告によると、運動能力の発達は年齢相応なのに、言葉がほとんど話せない2、3歳児が増えているとのことです。要するに、年長の子にも年少の子にも、総じて他者とのコミュニケーション、ないしは人間関係作りの場面に何やら大きな支障が生じてきているようです。一体、なぜ…?