新型コロナウィルスに関わる声明

一人ぼっちをなくそう~外に出よう~

新型コロナウィルスの感染拡大防止と、子どもの遊ぶ権利を守るために

 

2020-03-09

NPO法人東京少年少女センター

少年少女センター全国ネットワーク

 

・不安の中で孤立する子どもと家庭

 

新型コロナウィルスの感染拡大防止を理由に学校の休校、児童館や社会教育施設の休館、図書館の利用が規制されたりするなど、子どもの居場所が著しく制限されています。

 

さまざまな家庭環境がある中で、子どもたちを家庭に閉じ込めることによって、健康な状態にある子も心身に不調をきたす可能性があります。*1 *2

しかしながら、「外に出たら怒られたり、警察に補導されるって言われた。」、「予告なしに先生の家庭訪問があるので外に出られない。」という子どもや親たちの声があります。「休校にして自宅で過ごす呼び掛けをしているのに、人を呼び寄せることは一貫性がない」と冒険遊び場を閉園した自治体の担当者が言う*3など、「外出せず家の中で過ごすこと」を子どもや家庭に押し付ける指導が行われている地域もあります。

 

おとなたちが、すべての社会活動、経済活動を中止して家の中に閉じこもることができないのと同じように、子ども本来の活動である外遊びをおとなたちが一方的に制限することは子どもの育ちにとっても、子どもとおとなの関係にとっても好ましいことではありません。

 

休校期間中、家庭で子どもを見られない子を受け入れた学校では、離ればなれに座らされ、「しゃべっちゃだめ、うごいちゃだめ」と先生の監視下で身動きすることもできずにいる辛さから、わずか半日で「もう絶対に行きたくない!」と泣き出す子もいます。*4

新型コロナウィルスの感染拡大の防止対策については、「換気が悪く」、「人が密に集まって過ごすような空間」、「不特定多数の人が接触するおそれが高い場所」を避け、風邪のような症状があれば外出を控えるという指針が厚生労働省から発表されており、健康な子どもたち(おとなたちも)の行動を一律に制限する根拠は見られません。*5

 

「友だちにうつしても、うつされるのも心配なので、友だちを誘うのが不安」と言う母親たちもいます。「感染も怖いけど、周囲の目の方が怖い」「咳の音がしただけでビクッとしてしまう」、「花粉症でくしゃみをすると、まわりの人が一斉に顔をそむけるのが怖い」と、見えないウィルスの脅威から疑心暗鬼が膨らみ、おとなたちの心をも委縮させかねない事態となっています。

「突然の休校にもやもやしています。子どもたちは長いお休みを満喫しているみたいですが、日に日に寝る時間が遅くなり、というより眠れなかったり、疲れていないので、ご飯も進まない。なので、私のイライラが募るという悪循環です。」(3児のママ)

 

親の不安は子どもたちの心をますます不安にさせ、場合によっては、親子の会話にも軋みを生じさせる原因にもなりかねません。

 

・一人ぼっちをなくそう~外に出よう~

 

「学校が休みになって、公園で遊ぶ親子や子どもたちが増えました。」「いつもと違って異年齢で遊んでいて、これがほんとうの子どもの姿だなと思いました。」子どもの遊び場づくりにかかわってるひとからの報告です。「いつもけんかばかりなのに、姉妹がなかよくあそぶようになりました。」というママも。

部活も塾も、習い事も「自粛」させられている中で、すべての年代に共通して「ひまな時間」がはからずも生まれているのです。

 

「屋外で過ごすこと、外で遊ぶことは、感染のリスクは少なく。むしろ子どもの健康維持に有効」と複数の医師・専門家が言っています。神戸市の教育委員会は、市議会の中で、「公園で遊ぶことはむしろ推奨されるべき」「必要に応じて学校側に周知したい」と表明しました。*6

 

まもなく3.11を迎えます。未曽有の災害の中でおとなたちに勇気と希望を与えてくれたのが子どもたちの笑顔でした。被災地の経験から、どんな状況の中でも、子どもたちを孤立させないこと、子どもたちの遊び場、遊び時間、免疫力を高める身体を動かす遊び、子どもたちの主体的な活動を保障することの必要性をわたしたちは学んできました。

こういうときだからこそ、ウィルスや免疫のことなど、人は自然の営みとどのように向かい合ってきたのかを学び、新型コロナウィルスの感染・拡大を防ぐ努力をしつつ、子どもたちの外遊びを保障する工夫をしていくことが望まれます。

 

心ある人たちと手を取り合って

 

少年少女センターは「一人ぼっちの子をなくそう」を合言葉に、地域で、子どもの遊びや異年齢集団の活動を育ててきました。公園や広場での「遊び会」も全国各地で定期的に行ってきました。遊具で遊ぶのでも、おとなに遊んでもらうのでもなく、子どもたち・青年たちがつどい、のびのびとしたエネルギッシュな遊び活動をするのがその特徴です。

青年たちがいることで、高学年や中学生たちも小学生や小さい子どもたちといっしょに、安心して全力で遊ぶことができる場と時間を生み出してきました。そういう活動を通して「子ども・青年の育ち」に自信と確信を持つ親たちの輪もあります。

子どもの遊び場づくり、子ども劇場などの文化活動に取り組んできた人たちの中にも共有できる経験と教訓があり、この事態の中で、「自分たちができることは何か」を模索しています。

「一人ぼっちの子をなくそう~外に出よう~」を合言葉に、心ある人たちと手を取り合って、子どもたちが暮らす町に外遊びの場、時間を作る工夫をしていきましょう。

 

【安心の外遊びのために】*7

 

・熱や咳などの症状がないかチェックしましょう。

・じゃれつき遊びや対面して大声で歌ったりする時間が長くならないようにしましょう。

・「あそぼ」「いれて」など子どもたちからの発信をたいせつにしましょう。

・こまめに休憩時間を取り、手洗いやうがいをしましょう。

・清潔なハンカチ、ティッシュを持ちましょう。

・お弁当を食べるときは、適度な間隔を空け、むやみに密着しないようにしましょう。

・どんな遊びをして、どのように過ごしたかを保護者に伝える工夫をしましょう。

・子どもたちや保護者がどのような思いを持っているかをよく聴き、いっしょに学び、考えていく姿勢を持ってかかわりましょう。

 

【注】

*1「長期の休みは生活リズムが崩れやすいものだが、今回は特に室内での時間が増え、光を浴びる機会が減ることが心配になる。

生活リズムを整えるには、「光、暗闇、外遊び」のバランスが大事だからだ。

教室で窓側に座る子どものほうが廊下側より寝つきが良い傾向が見られた。家でも日当たりの良い場所で過ごすよう心がけてほしい。

休校は、子どもらしい時間を過ごすチャンスかもしれない。

ワクワクドキドキする体験は、判断や協調性にかかわる脳の前頭葉を成長させる。

普段できないことをする時間ができたと、親も発想を転換してみてはいかがだろうか?」2020-03-06読売新聞 日本体育大学教授 野井真吾さんのコメントより抜粋

*2子どもは、日光を浴びて体を動かすことで、成長ホルモンが分泌され、睡眠のリズムも整う。ストレスの発散にもつながる。順天堂大名誉教授(小児科)の新島新一さんは「運動や遊びは食べたり寝たりするのと同じくらい大事。」と。2020-03-05読売新聞

*3東京新聞web 「<新型コロナ>運営か休止か 外遊びの場「プレーパーク」」2020-03-06

*5 厚生労働省「新型コロナウィルスの集団感染を防ぐために」

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000602323.pdf

*6 2020-03-08赤旗

*7 2020-3-8時点のものです。ほかに必要な項目があれば、補足し、だれもが理解し安心できるものにしましょう。

 

【参考】

★厚労省の行政医も務めていた感染症の専門医の高山義浩さんのQA

https://www.facebook.com/permalink.php?story_fbid=2731200086933481&id=100001305489071

★日本冒険遊び場づくり協会の見解

https://bouken-asobiba.org/news/detail-687.html

TOKYO PLAYの見解

https://tokyoplay.jp/news/

2020/02/「子どもたちが遊び育つ」を考えて、可能なこと/

TOKYO PLAYのホームページからたどってください。

★「新型コロナウィルスに関連した感染症対策への対応に関する緊急声明」日本環境教育学会

http://www.jsfee.jp/images/general/JSFEE_statement_for_outdoor_activity_20200307r.pdf

★藤田医科大学「新型コロナウィルスってなんだろう?」

http://www.fujita-hu.ac.jp/~microb/Final_version.pdf

★専門家会議の見解

https://www.mhlw.go.jp/s…/seisakunitsuite/newpage_00011.html

WHOの見解

https://www.who.int/…/who-director-general-s-opening-remark…

 

【体調管理について】

子どもは教室にいるよりは外で元気に遊ぶことが奨励されます。

この期間を最大限に利用し、子どもらしい生活ってこんな生活なんだと、いきいきと実感できるチャンスだと思います。

問題は自分がなったときに家庭内に広げない、家庭内でうつる可能性を避けることです。

それには体調管理が大事で発熱咳の前に体がだるい、風邪気味という症状が数日持続することが多いようです。

遊ぶ前の体調管理を親と確認し、悪ければ外に出ないようにしましょう。

体調の悪いときは、家庭内でのマスク着用、手洗い、換気の大切さを伝えましょう。

換気がとてもだいじです。1時間に6回は窓を開け空気の入れかえをしましょう。

家族内での感染対策もきちんと考えておきましょう。

NPO東京少年少女センターの事業に医療担当として永年かかわってくださっているお医者さんに聞きました。

 

 

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一人ぼっちをなくそう~外に出よう~ 新型コロナウィルスの感染拡大防止と、子どもの遊ぶ権利を守るために
NPO法人東京少年少女センターと少年少女センター全国ネットワークの新型コロナウィルスによる一斉休校を受けての声明です。
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